あの子の話
...早く、早く。
休憩時間が終わるのを待つ。
あと30分。
「早く、過ぎてくれないかな...」
壁を一枚挟んだ向こう側ではしゃぐ同級生。
その会話内容がはっきりと聞こえる。
どうやら、珍しく春科さんが来ているようだった。
先生がキッチンでお弁当箱を洗う音がする。
集中できないまま暫くテキストを見ていると、キッチンに来たついでにこっちの部屋を覗いてくる先生。
「春科来てるぞ」
ちら、とそちらに目を向けて、答える。
「...知ってる。聞こえた」
五月縄かったか、と苦笑いの先生に、別にいつもと変わんないし、と答える。
そうか、と呟いた先生は、お弁当箱を乾かしながら私に告げた。
「春科、お前の事探してるみたいなんだけど。どうする?...会うか?」
「...え」
なんで。私、何かやったかな。何の用事だろう。
...どうしよう。どうしよう。突然言われた言葉に、なんと返せばいいのか分からない。