勝手に好きでいさせて

「そのせいかね、お兄ちゃんは私にとっても優しくしてくれたの。
それで、格好良くって、優しいお兄ちゃんが小さい頃からずっと好きだった。
でもさ、この恋って結ばれちゃいけない恋でしょ。
だからね、お兄ちゃんには自分の気持ち言わなかったの。
ずっと、心の奥の方にしまっておいたの・・・でね・・・・」

そこまで言うと梓沙は言葉を止めた・・・。

梓沙は俯いて、泣いていた。

「私のね、お兄ちゃん結婚しちゃうんだって・・・それで、伊久斗くんはお兄ちゃんにそっくりなの。だから、伊久斗くんと付き合えば、いつでもお兄ちゃんがいなくなってもそばにいるような感じがするし、お兄ちゃんへの気持ちも忘れられて、お兄ちゃんもめんどうな妹のめんどうも見ずに、彼女さんと2人で暮らせるって思って、伊久斗くんに紅白したの・・・」

「・・・」

何も言葉が出てこない・・・。

「伊久斗くん、恋歌ちゃんのことが好きなんでしょ?・・・でも、伊久斗くんまで私のことを捨てないで・・・」

そう言って、梓沙は俺に抱きついた。

俺はなんにも知らなかった。

梓沙がこんな辛い気持ちでいたなんて・・・。

俺はそんな梓沙を突き放すことができなかった。



梓沙が泣き止むまで、俺はずっと梓沙の背中をさすっていた。

俺の頭の中は真っ白になっていた。

こんな辛そうにしてる梓沙をそのまんまにしておけない。

こんな時、自分の優しくする性格が邪魔だ・・・。






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