勝手に好きでいさせて
私は麻優と帰っている。
私たちの間に会話はない。
伊久斗、あのままにして来ちゃったけど、大丈夫かな?
「伊久斗のことが心配?」
「えっ・・・」
「恋歌、俺はお前の本当の気持ちを知りたいんだ。お前は今、誰のことを考えてる?俺のこと?それとも伊久斗?」
私の中には今、1人しかいない。
「ごめん、麻優。私、やっぱり伊久斗のことしか考えられない・・・」
「やっと、本音言ったな」
「えっ?」
「お前ら想い合ってんのに結ばれねぇんだもん。あぁ、今までの全部芝居だから。お前ら本当にバカだよな」
「芝居?・・・てことは、麻優はただたんに私たちが結ばれるように手助けをしてくれたってこと?」
「そういうこと!!わかったら、早く伊久斗のところへ行けよ。たぶん、1人で泣いてると思うぞ」
そう言うと、麻優は私の体をクルッと回転させて、学校の道の方へ向けた。
そして、私の背中をドンッと押して「行け!」っと言った。
「うん。麻優、ありがとう」
私はそれだけ言って、また学校に戻った。
早く、早く伊久斗のところへ行かないと・・。
ーバンッ
「クッソ!!あぁぁぁあーーーー!!」
伊久斗!?
伊久斗は下駄箱の前で泣き崩れていた。
あんな伊久斗初めて見た・・・。
「伊久斗、誰もいないからって大声だしちゃダメだよ」
そう言うと、伊久斗は顔をあげた。
「なん・・で・・・恋歌が・・ここに?」
「伊久斗が泣くなんてらしくないよ。ホラ、ちゃんと立って」
そう言って、伊久斗を立たせる。