勝手に好きでいさせて
ーギュッ
「伊久斗?」
「今は・・・このままで・・・いさせ、て」
「うん、いいよ」
伊久斗からはさっきみたいに怖いという感じはなかった。
私は伊久斗の背中に手をまわした。
伊久斗、やっぱり私、やばいくらい伊久斗のことが好き。
だから、伊久斗が他の人を好きでも、勝手に好きでいさせてね。
【side麻優】
俺は、ずっと恋歌のことが好きだった。
だから、伊久斗が恋歌のことを好きだと気づきながら、梓沙と別れないことに腹がたった。
俺の方がずっと前から好きで、こんなに思っているのに恋歌には好きになってもらえないんだから。
だから、もう奪ってしまおうと思った。
でも、やっぱり恋歌は伊久斗じゃないとダメなんだな・・・。
芝居なんて嘘なのに・・・。
芝居で殴るまでしねぇよ。
ずっと、俺のものにしたかった。
だけど、好きな人が幸せなら俺はそれでいい。
だから、恋歌を伊久斗のもとへ行かせた。
恋歌の体を回転させたのは、泣きそうな顔を見せたくないから。
あの顔を見られたら、全部嘘だったってことにはできにくくなるし。
今日からは、まっすぐ自分の家に1人で帰るのか・・・。
1人で歩くってこんなにも退屈で、進んでる感じがしないんだっけ?
恋歌、俺本気でお前のことが好きだったよ・・・。