勝手に好きでいさせて

誰か来たような気がして顔をあげた。

「なんで戻ってきたの?」

「恋歌先輩、泣いてるような気がして」

さっき校舎の方へ戻って行ったはずの実夜琵くんがいた。

「恋歌先輩、泣かないで」

実夜琵くんは親指で私の涙を拭き取ってくれる。

どういうことなの?

さっきの実夜琵くんはとても怖かった。

でも、今の実夜琵くんは・・・優しい。

「恋歌・・・」

実夜琵くんはそう言って私を抱きしめた。

「やめて」

私は実夜琵くんの胸あたりを押し返した。

「あははは・・・泣いても俺のものだからな」

実夜琵くんはそう言って行ってしまった。

私の過去を知り、それを使って脅してきた実夜琵くん。

ひどい人かと思えば、優しくしてくれる実夜琵くん。

どっちが本当の実夜琵くんなの?

もう、何もかもわかんないよ。



私は、その後放課後になるまでずっと体育館の裏にいた。

授業サボるなんて初めてかも・・・。

悠、心配してるかな?

みんなが帰ったくらいに教室に鞄取りに行こう。

私はこれからどうすればいいんだろう?

私はうつむきながらずっとそんなことを考えていた。

「恋歌?」

えっ?

「こんなところでどうしたんだ?」

顔をあげると悠と麻優がいた。

「午後からの授業こなかったから心配したよ。はい、鞄持ってきたよ」

「ありがとう」
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