紅蓮の鬼外伝


彼女は俺がとった距離をつめて、胸を突く。


ブチュリという気持ち悪い音が耳に届いた。


「か…ッは」


ビチャビチャと口から赤黒い血が出ていく。


息がしにくい。


だけど。


――消えろ!


俺の体を貫いている彼女の腕を掴み、彼女の首めがけて思い切り引っ掻く。


しかし、力が入らず途中で止まってしまい、ひっかかってしまった。


彼女はそれでも悲鳴を上げなかった。


だけどこのままの状態では死ぬと直感したのだろうか。


サッと退いた。


ズボッと彼女の手が俺から抜けて、血が宙を舞う。


それと同時に、俺の爪にひっかかっていた彼女の首が地面に落ち、瞬く間に灰となった。


――お、落ちた…!!!


今まで戦っていたのが馬鹿らしくなるほど、いとも簡単に。


そして支える力を失った俺はガタンと俯せになり、その際に埃がふわりと飛んだ。


視界がぼやけて、暗くなっていく。


「……………」


体温が下がっていき、寒い。


――畜生、相討ちかよ


俺はここまでなのだと、悟った。



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