紅蓮の鬼外伝
それは、淋が俺ん家に居候していた時のこと。
「俺、思ったんだけどさー」
「………………」
俺はベットで漫画を読みながら淋に話しかける。
漫画といっても少年漫画ではなく、少女漫画。
因みにこの漫画は買ったのではなく、お手伝いさんから借りたものである。
淋の方をチラリと見ると、彼女は俺の本棚から取り出した分厚い本を読んでいた。
――…マジメか
彼女は分厚い本から目を離して俺を見る。
綺麗な黒髪。
子供みたいに大きな目。
……いやパッと見、マジ子供みたい。
だけど、どこか大人っぽさが出てて。
「……なんだ」
自分を呼んで俺が何も言わないことを不審に思ったのか、淋が眉にシワを寄せて俺を見る。
「んー…」
ふと、俺は今読んでいる少女漫画に目を移す。
主人公の女が恋人である男の前で泣いているシーンだった。
因みに女が男の前で泣くのは15ページくらい前でも見た。
気のせいか、主人公がどことなく淋に似ている。
「……泣かないよな…」
もう一度、漫画に目を落とす。
「は?」
淋の顔には「ナニ言ってんだ、おまえ」と書いてあった。