紅蓮の鬼外伝


それは、淋が俺ん家に居候していた時のこと。


「俺、思ったんだけどさー」


「………………」


俺はベットで漫画を読みながら淋に話しかける。


漫画といっても少年漫画ではなく、少女漫画。


因みにこの漫画は買ったのではなく、お手伝いさんから借りたものである。


淋の方をチラリと見ると、彼女は俺の本棚から取り出した分厚い本を読んでいた。


――…マジメか


彼女は分厚い本から目を離して俺を見る。


綺麗な黒髪。


子供みたいに大きな目。


……いやパッと見、マジ子供みたい。


だけど、どこか大人っぽさが出てて。


「……なんだ」


自分を呼んで俺が何も言わないことを不審に思ったのか、淋が眉にシワを寄せて俺を見る。


「んー…」


ふと、俺は今読んでいる少女漫画に目を移す。


主人公の女が恋人である男の前で泣いているシーンだった。


因みに女が男の前で泣くのは15ページくらい前でも見た。


気のせいか、主人公がどことなく淋に似ている。


「……泣かないよな…」


もう一度、漫画に目を落とす。


「は?」


淋の顔には「ナニ言ってんだ、おまえ」と書いてあった。




< 17 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop