紅蓮の鬼外伝
-----バァンッッ
この狭い部屋に銃声が響いた。
「ちッ」
誰かの舌打ちと血の匂いがする。
だけど、さほど血の量は多くない。
恐らく、どこかに銃弾が掠った程度だろう。
「要(カナメ)!」
先にここ、鬼老院に来ていた銀鬼の一人、谷津(ヤヅ)が俺の名を呼んだ。
「こいつら何なの?ほんと意味分かんねえ」
彼は肩で息をして訝しい表情を浮かべ、「しかも鬼老院の方々は全滅してたしよ~」とブツブツ呟く。
「ここで一つ分かってんのは、こいつらを倒さねえと俺らが死ぬってことぐらいだろ」
-----バァンッッ
俺がそう吐き捨てた時、再び銃声が響いた。
「は!!?無理無理!!!絶対無理!!!あんな竜胆様みたいな強いモンなんか倒せねぇよっ。今バカみたいにピンピンしてる颯天(ハヤテ)を戻らせた方がいいって!!!」
「え、僕?」
谷津の隣にいた颯天がキョトンとした顔を見せ、俺は谷津の言葉に眉根を寄せた。
「尾行されない保証は?」
谷津の顔を見ずに、端的に俺は言う。
「……ないとは言い切れない」
「よし、決まりだ」
いつの間にか、谷津と同じ銀鬼の吉野(ヨシノ)が話に入っていた。
「こいつらを倒して、残ったヤツが報告に行くってことな」
そして「今回は勝手に出ていくなよ、凌(リョウ)」と俺に向かってニヤリと口角を上げ、東の方へ行ってしまった。
「だってさ」
それを聞いていた谷津も俺を見てニヤリと笑い、西へ行った。
「ちゃんと報告してから行ってよ」
谷津と同じ銀鬼の颯天は、困ったように眉を下げ、南へ行った。