紅蓮の鬼外伝
「『俺のこと好き?』」
またもやそんな淋を放っておいて、ハマったので無理矢理続ける。
言っておくがこの言葉は科白である。
「『…好き』」
淋が盛大にため息をついて、言うが。
何故かそのため息が妙に色っぽかった。
――……淋が、欲しい
そして俺の唇と淋の唇が近づいていく。
「……………………」
だけど淋は何かに気づいて窓の方をみた。
「……………………」
「……………………」
「カー」
そこに鴉が一羽ちょこんと乗っていた。
「……………………」
「……………………」
そしてバサバサと羽を広げて空へ羽ばたいていく。
「ちょ、ちょっと待てそこの鴉!!!戻ってこい!!!」
とか必死に言っても戻って来る筈がない。
そんな必死で叫ぶ俺を、淋が死んだ魚の目のような目で見る。
「……………………」
「……………………」
「……あの鴉、絶対空木にチクるよな。さっき俺らがやってたお芝居」
「……だろうな…」
鴉が出ていった窓を見て、立ち尽くす。
「「はぁ…」」
俺と淋のため息が重なった。
それから、淋が帰って分かったらしいけど。
ヒビが入りまくって使えない筆が空木の部屋からたくさん出てきたとか、なんとか。
≪おしまい≫