紅蓮の鬼外伝
「あれ、わんこじゃん。何やってんだこんなとこで」
彼の隣には筋肉質な女がいる。
『実は不倫の真っ最中とか?』
「真昼間から?」
ヤナセの言葉につい反応してしまう俺。
「なにが?」
それを聞くわんこ。
そして彼の顔に「オマエ何言ってんだ、医者に診てもらった方がいいんじゃねーの」と書かれていた。
「不倫」
「は?」
俺がそう言うと、彼は更に顔をしかめた。
「…よく分かんねーけどさ……」
彼は続きを言おうとして、ハッと何かに気づく。
「ヤナセと話すんなら口に出すなよ」
そして何もなかったのように続けた。
「なんで?」
「ヤナセの声は俺らには聞こえないから、一人で意味分かんねえことを言っている変なヒトにしか見えねえぞ」
「え」
本当に!!?
ヤナセの声って俺にしか聞こえねーの!!?
『あれ、今頃気づく?』
「エェエ…じゃぁ、俺……ずっと一人で喋ってたってこと!!?」
『それさっきからあの男が言ってたことなのサ』
「本当に!!?」
『オレは嘘は言わねえのサ』
「嘘ぉおおおお!!!」
≪おしまい≫