紅蓮の鬼外伝


「わたし、りんです」


俺が木から降りた後、彼女が笑って言った。


「……………」


『遊ぼう』と言われたことに対して、俺は返事をしていない。


けれども彼女は、俺が木から降りた時点で『遊んでくれる』と解釈したらしい。


……少し強引な気もしないでもないけど、まぁいいや。


幼い子供相手にムキになるのも面倒くさい。


「あ。」


じぃっと彼女を見ていると、ふと、俺の目が彼女が着けているあるものに留まる。


紅梅色をしたひし形の帯留に、蘇芳色の草書体で書かれた〝赫〟という文字。


――あぁ…この子、長の


いつの話か忘れてしまったが、俺は長が紅鬼の女をめとったという話を思い出した。


俺は彼女をじっと見る。


くりくりした目が不思議そうに俺を見ていた。


――この子が、赤鬼と紅鬼の混血の子か



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