紅蓮の鬼外伝
壱:暗黙の了解は破るモンじゃない
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この里には子供が俺とりんしかいないこともあって、俺らはすぐに打ち解けた。


そんなある日のこと。


暇潰しに、俺とりんがユキ兄のことを呼び捨てにしてみた。


これは暗黙の了解だったから、破ったらどうなるのかという好奇心が働く。


「遊んでくださーい!」


りんがユキ兄に飛びつき、笑顔で言う。


「ん?……今忙しいからもうちょっと待ってな」


彼はそう言い、危ないから離れてと言うようにりんをはがした。


「………………………」


これでは全く面白くないので、俺は彼の名前を叫び、命令した。


ピクリとユキ兄の肩が動き、りんはこれから何が起きるのだろうと、胸を躍らせているような表情を見せた。


「雪媛っ、俺らと遊べやっ」


勿論のこと、あくまで冗談だというように少し笑う。


「…空木……」


どうやらユキ兄にはそんな冗談なんて伝わっていないらしく、物凄い雰囲気を纏って俺の方を向く。


「……………」


それを見てツツーと俺の背中に冷たい汗が伝っていき、ゴクリと生唾を飲む。


その時りんと俺は、そんなユキ兄を見て悟った。


暗黙の了解は破るものじゃないと。



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