紅蓮の鬼外伝


ユキ兄は真っ黒な雰囲気を纏っているのに、スッゴイ笑顔で俺らに近づく。


――うわぁ、絶対怒ってるー!


俺はりんと目で合図して、だーっと地面を駆けて逃げた。


「ユキ兄様があんな風に怒ったの、初めて見ました…」


俺と逃げながら、りんが心底驚いた顔をしてそう言った。


「!」


そしてその後すぐ、彼女は何かに気づいたようにバッと後ろを振り返る。


「………ッ…!」


息を飲んだ音を聞いた俺が彼女を横目でチラリと見ると、りんの顔からサーッと血の気がひいていく。


不思議に思った俺は、彼女と同じように振り返った。


「………ッ…!」


それを見て俺も本当にりんと同じようにサーッと血の気がひいていった。


だって逃げる俺らを追うユキ兄が凄かったから。


言葉で伝えれないくらい、明らかに何か憑かれていて、ひどい顔をしてたから。


彼に何が憑いていたのかは分からないけど、確実になにかがいた。


それで逃げたけど、俺より年も体も小さい淋はすぐに捕まってしまった。


ユキ兄は捕まった淋を盾にして俺に揺さぶりをかけ、俺がその場に行くよう仕向けた。


その後は、淋も俺も罰としてユキ兄が付きっきりで赤鬼の力を開花させようと、山に籠らさせられたのだった。



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