紅蓮の鬼外伝
「イーヤー!!!帰らさせてください!!!」りんが滝壺で叫んでいる。
「ダーメ。りんはまだ火、灯せないでしょ?」
さっきの何かに憑かれていたユキ兄はおらず、いつもの口調で言う。
「もう火くらい灯せますもん」
りんがプウと頬を膨らました。
そんな彼女を見て、少し頬を緩める。
――子供だなぁ
当たり前っちゃ当たり前のことなのだが、俺はそう思わざるを得なかった。
「その場で灯せんのか?」
ドバドバと高い位置から水がりんの体を叩きつける。
「で、出来ますもん!」
りんは噛みつくようにそう言い、すぐにプイッとユキ兄から目を逸らした。
「……………」
そして彼女は諦めたかのように乱暴に息を吐いて、その小さな手の上に橙の火を灯す。
あの年で水が降ってくる中、火を灯せるというのはやはり長の娘だということか。
俺は少し納得した。