紅蓮の鬼外伝
ユキ兄曰く、男の名前は藺草(いぐさ)。
だけど彼は自分の名前が雑草なことは全く気にしてないらしいし、漢字ごときで気にする必要もないだろっていう考え方らしい。
…まぁ、確かにご尤もなことだけれど、俺の中ではやっぱり何か突っかかっているものがあった。
それが何かは分からないけど。
そして彼もユキ兄と同じ境遇にある人だった。
黒鬼の長が亡くなって、新しい長に就いた。
今日は息抜きしに来たらしい。
黒鬼は俺ら赤鬼より格が上だし、力も上だから、色々大変らしい。
だから会議が遅くなったという口実を言って、束の間の休息を取っているそうだ。
「じゃぁ、俺はもう行くわ」
彼はそう言ってここから出ていった。
息抜きも本当に短いんだなぁ…。
俺は去っていく藺草様の背中を見ながらそう思った。