紅蓮の鬼外伝
参:許婚ってやつですか
それから随分と時が経った。
この間に200年は軽く過ぎていて、エドとかいう場所で大きな火災があったり、大きな水害に見舞われたらしい(鴉からの情報)。
俺らがいるトコはそんな天災にとご対面なんてしなかったけど、あの辺りは藺草様が住んでる場所らしいから心配してた。
俺じゃなくてユキ兄と淋がね。
もちろん俺も心配はしたよ、一応。
属首長会議がある度に藺草様はここに来るようになってから、彼からしか学べないものもたくさん学んだし、俺らの仲は深まった。
実をいうと、俺が鴉と喋れるようになったのは藺草様のおかげだ。
そして彼に俺の焔のことを話してみたけれど、やはりこの焔は殺すことだけにあるようなもので、これをどうこうして日常でユキ兄や淋みたいに使うことは不可能らしい。
……複雑だなあ。
こんな焔、なんで俺が持って生まれてきたんだろう。
俺ではなく、もっとほかの強い奴らにあればよかったのに。
なんて、少し愚痴のようなことを零すと藺草様は、それならお前が誰よりも強くなればいいだろう?と、大きな手で俺の頭を撫でたっけ。
そして俺はその言葉に従って、彼に色んな稽古をつけてもらい、彼が来ない間はユキ兄や親父に相手してもらった。
いろんなことを教えてもらう俺とユキ兄の関係はさらに深まっていく一方で、俺と淋との関係は壊れかけていた。
昔はよく木に登って景色を眺めていろんなことを話してたりしたのに、彼女は何故か俺を避けてさけて避けまくる。
もしかして、俺が気づかない間に何かしたんじゃないかと思って、淋に聞こうとしても、俺が彼女の視界に入るだけで淋は逃げ出してしまう。
……ほんとに俺、何かとんでもないことをやらかしてしまったのだろうか。
そんなことを思って、ユキ兄に相談してみると、単に、今はそういう時期なだけらしい。
そしてユキ兄曰く、淋は俺のことをオスとして見始めたから照れているだけらしい。
それが本当なのかわからないけど、聞いた時は正直、開いた口が塞がらなかった。
そういう時期、ねぇ…。
俺をオスとして見始めてくれたことは嬉しかった。
だってこの里じゃ、若いのはユキ兄と俺と淋くらいしかいないから、どうせ夫婦になるし。
いやまだ分かんないけど、まぁ…淋は俺のお嫁さんかな。
そんな事を考え始めた俺は17になって、淋は13になっていた。