紅蓮の鬼外伝
「着いたよ、淋」
俺は彼女を下ろして少し大きな石に彼女を座らせた。
よくよく淋の顔を見てみると、いつの間にか少し大人びていた。
いつの間にこんなに美人になったんだろう。
だけど、そんな綺麗な顔に小さな傷が出来ていた。
俺は持って来た布を水で濡らして、消毒がてらその小さな傷をふく。
だけど淋は恥ずかしいのか、痛いのか、顔を背けた。
まぁ、確かに口を吸えるくらい近くにいて、且つ、じっと自分の顔を見られるから背けたくのも分かるんだけど。
「淋」
俺が困ったように彼女の名前を呼ぶと、淋は恥ずかしそうに俺を見た。
少し眉が八の字になっていて、少し口がへの字になっている。
「ヨゴレ落とさないと破傷風になるかもしんないよ」
「…………………」
それはきっと淋も分かってたんだと思う。
彼女はしぶしぶこちらを向いた。
そんな淋に俺は、顎を掴んで顔を背けないように固定して、鼻息がかかりそうなほど近くでその傷をふいた。
恥ずかしくて顔を真っ赤にする淋が見たくて。
その時だけでもいいから俺だけを見てほしくて。
わざとやってる俺は、自分にも加虐心があるのかと思った。