紅蓮の鬼外伝


ふと、足を見ると、彼女はそこも少し怪我していた。


着物が大きいのか、それとも彼女が小さいのか、あるいは両方か。


裾が擦れて破けていた。


それから俺は傷口のまわりの泥や砂を拭いた。


「ありがとう」


全部綺麗にした後、淋が遠慮がちに言った。


「うん」


それから俺は汚れた布を川で洗う。


水の音がした。


「……ねぇ、空木」


「ん?」


バシャバシャという音が響く。


「背、伸びたね」


「…うん」


彼女の声が、なんとなく悲しそうだった。


「………………」


「………………」


そこで会話は途切れた。


俺も淋も黙って、ただ、流れる川の音と俺が布を洗う音だけが聞こえる。
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