紅蓮の鬼外伝


「空木」


俺が布を洗い終わって立ち上がると、淋は俺を呼んだ。


「ん?」


俺は振り返って今にも泣きそうな彼女を視界におさめる。


彼女は俺のところまで来て、俺の目を見たり逸らしたり、まるで何をどう言おうか迷っているようだった。


「………………」


迷っていたのは知っていたけど、何も言わない淋に痺れを切らせた俺が歩こうとすると、彼女が俺の袖を掴んだ。


まるで俺を逃さないというように。


「なに、淋」


捕まったのならしょうがない。


俺はいつもより、優しく声をかけた。


すると淋は俺を見上げて申し訳なさそうな顔をする。


彼女の綺麗な瞳が怯えていた。


「ご、めん…ね」


そして淋は絞り出すように言い、俯いた。
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