紅蓮の鬼外伝
「…淋は……どうしたい?」
宴会の音楽を聴きながら、俺は彼女に聞いた。
だって夫婦になるのを決めるのは彼女だから。
お腹に子供を宿せるのは女だけだから。
誰の子を宿すかとか、誰と一緒に居たいかとか。
全部決めるのは彼女だから。
「……空木は…?」
淋が此方を向かずに言った。
「わざわざ俺に聞くの?分かってるくせに」
フッと自嘲気味に薄く笑みを浮かべ、目を落とす。
「俺は……淋の傍に居たいよ…」
「……………………」
「知ってるでしょ。俺は淋が好きだから」
「……………………」
遠くで、笑い声がした。
「……空木、」
「ん?」
震えたような声で、淋が俺を呼ぶ。
「ごめん」
ハッキリと淋じゃなくて、俺の知らない淋が答えた。
「……うん」
淋が俺を見た。
「ごめん……空木…」
涙がぼろぼろと零れて、綺麗な顔がとんでもないことになっている。
彼はこんな淋を知っているのだろうか。
なんて、この場にふさわしくないことを考えた。
「うん、知ってる」
もしかしたら、俺が気づいた時点でもう時すでに遅しだったのかもしれない。
俺は泣いている彼女を抱きしめた。
「分かってたよ、淋」
彼女がハッキリ言ったからだろうか。
何故か俺の心はスッキリしていた。