紅蓮の鬼外伝


「……淋は…いつ見ても綺麗だね…」


いつの間にかポロリとでてしまった自分の本音に内心驚きつつ、彼女の頬に手を添える。


「まるでお月様みたいだ」


「………………………」


俺の言葉を聞いた途端、淋が目を見開いて、切なげにした。


さっきの言葉、彼も同じようなことを言ったのだろうか。


だとしても。


「贅沢だなぁ……俺」


夜にはお月様がいて、昼には太陽がいて。


なんという贅沢者なんだろう。


赤鬼の分際なのに、なんて贅沢なんだろう。


「ゲホッ…コホッ」


「空木!!?」


なんて、どうやら俺の体は感傷に浸る時間もくれないようだ。


急に這い上がってくるような咳に、俺は小さく悪態を吐いてた。


「…私も贅沢者ですよ」


咳き込む俺の背中をさすりながら、そう彼女が小さくつぶやいた。


「どうしたの、淋」


漸く咳が落ち着いて、俺は何しに来たのかと彼女に尋ねた。


「あ、あぁ…」


淋は思い出したように、そこに置いてあるものを俺に見せる。


「桃、持ってきました」


「げ…」


汗が滝のように流れ出た気がした。
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