紅蓮の鬼外伝
伍:人間(女)と俺
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俺が淋にフラれてから季節が変わり始めた頃、淋が赤鬼の里から姿を消した。


もちろん俺も直ぐ、淋を探しに里を出た。


だけどこんなことは前代未聞で、里を出るということは乃ち死を意味していた。


二度と里に戻ることは許されない。


戻ってきた者は一族総出で死に追いやられる。


それでもいい。


尻尾巻いて逃げ帰ってこなければいいのだ。


最悪、この先ずっと人間として生きていくという手もある。


淋への想いを絶ちきれなかった俺は、死んでもどうなっても構わないから彼女を探したかった。


たとえ、淋の隣に誰かいるとしても。


分かってはいる。


彼女の隣に誰がいるかなんて、分かってる。


それでも俺は、淋を探したかった。


そして俺は自分が鬼であることは伏せて、色んな可能性をしらみ潰しに人間に聞きまくった。


だけど、どれも役に立たないことばかりで正直ムシャクシャしてた。


ありきたりな話、雛に出逢ったのはちょうどその頃。


日雇いで稼いだ少しばかりのお金と、売られた喧嘩を買ったついでにその人の所持金×4を持って、花街に行った。


その場所は、すれ違う人とかの話で日頃の鬱憤晴らしには丁度いいらしいから。


もちろん花街の意味を知らなかった俺は、行って当然驚いた。


入り口周りには柵のようなものがあって、女たちまるで店の品物のように並べられて、男がさも当然というように気に入った女を指名していく。


人間の世界では女が男を選ぶのではなく、男が女を選ぶのかと。


俺らとは真逆だったから、衝撃的だった。


因みに夜出歩くのは子供の時以来だったから、少し童心に返ったりして、後で反省した。


まぁ、その童心がなければ雛に出逢うこともなかったのだろうけど。
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