紅蓮の鬼外伝
「あんさん、ドえらい美形やなぁ。ウチの子たちをお気に召したようで?」
不意に声をかけられて驚いた。
いや、近くに人間がいるのは知ってたんだけど、まさか俺に話かけてくるとは思ってなくて。
しかもボーッとしていたから、俺がそんな目で彼女たちを見ていたと思われていたんだなと知ってちょっと複雑だった。
もっと詳しく言うと、はしっこまで来たからこれからどうしようと考えてて、いつの間にかボーッとしていた時。
「呼び子が俺一人に声かけるんだ…」
ここまでフラフラ観察しながら歩いてきたけど、呼び子と話しているのは全員と言っていいほど三、四人の群れている人間だった。
だから意外だった。
「そりゃこんな美形、放っておく筈がないでしょう」
「でも俺はあんまり金持ってないよ」
「その時はその時で」
「………………………」
そして俺はその呼び子の言われるがままに、店の中へ入るのだった。
「………………………」
入ってから直ぐ、好奇の目で見る人間たち。
これが所謂、注目の的とかいうやつか…とか思いながら呼び子についていく。
すれ違う女たちはなんとも重たそうな頭をしていて、どれだけ髪が長いのだろうかと気になる。
そして俺と目が合う女は皆、ほほを赤らめて目を逸らす。
それが不思議でたまらなかった。