紅蓮の鬼外伝


と、布が擦れる音がして、少女が意を決したような表情を浮かべ、俺の方にすりよってくる。


だけど。


「……きみ、足が悪いの?」


来かたがなんとなくぎこちなくて、そんな気がした。


「えっ…」


すると彼女は図星をつかれたように驚いた顔を見せ、目を泳がせた。


……もしかして、言っちゃいけないようなことだったりするのだろうか。


「無理しなくていいよ」


一瞬、戸惑ったがそんなことを気にせず、俺は立ち上がって彼女の元へ行き、隣に腰を下ろす。


「名は?」


「紫月(シヅキ)で……紫月でありんす」


彼女は言い直し、その語尾は初めて聞く言葉で、少し変な感じがした。


「ごめん。俺の前でだけ、それ止めてくれないかな」


なんとなく、嫌だった。


あい、と破顔する彼女はまるで、枷を外してもらって嬉しがる幼い子供のよう。


よく見たところ、彼女は年端もいかない十一、二の子供のようだ。


そんな子供までここで働くのか。


意外だ。


俺らみたいに外で遊んでいるのかと思ってた。


人間って、大変だなぁ。


なんて、暢気にそんなことを考えた。
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