モカブラウンの鍵【完結】
「佐伯さん」


言葉を遮った。

この人は真っ直ぐすぎるんだ。

だから傷付きやすい。


「俺、大丈夫です。誰かに相談すると楽になる。それは相手にほんの一部でも自分のなにかを預けたからかもしれません。

でも、それで相手が笑顔になったり、前を向いたりしてくれれば、自分が相手から預かったものはなくなると思います。だから、話してください」


「杉山って、ときどき、私より年上に見えるよ」

「中3から主夫をやっていたんで、精神年齢は高いと思います。あと妹のような、女王様のような性格を持った姉もいるんで」


小さな声を出して、佐伯さんが笑った。


「それ、宏実さんに聞かれた、怒られるわよ」

「内緒にしてください」

「うん。杉山、少し話してもいい?」

「はい」


紅茶を一口飲むと佐伯さんは遠くを見つめるように話し始めた。

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