モカブラウンの鍵【完結】
「彼とは友達の紹介で知り合ったの。

仕事している私を見ていればわかると思うけど、私、仕事、仕事で恋愛なんてどうでもよかった。だから、彼を紹介されてもなんとも思わなかった。

とりあえずメルアドだけ交換したの。

そしたら彼ね、1日1回、必ず、どうでもいいメールをくれたの。

【花のケイトウって、毛糸に似てるからケイトウって言うんじゃなくて、鶏の鶏冠(とさか)に似てるからなんだって。漢字で書くと鶏頭】とか、

【コンビニで新商品発見! うまそう】とか。

本当にくだらないの。でも、そんなメールをすごく楽しみにしている自分がいた。

久しぶりの恋に浮かれてたんだね。付き合いだして3カ月目くらいに、他にも女がいるなと思うようになった。

すぐ別れればよかった。彼といる時間が心地よかったの。

甘えてた、私。いい加減、別れなきゃと思ってね、今年の8月に彼と別れた。

でもグズグズ引きずっちゃって、突然泣くしね。

あの時はごめん。急に泣いてびっくりしたでしょ?」

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