モカブラウンの鍵【完結】
「まあ、びっくりしました。心配もしました」

「ごめんね。別れて1カ月経ったくらいかな、人につけられているような気がして。今朝、元カレだったってことがわかった。とんでもない男を好きになっちゃったわよね、私。反省しないと」


あの男、ストーカーもしていたのかよ。

最悪だな。

多分、あの男は佐伯さんのことは本気だったんだと思う。

女遊びの癖が抜けなかったのかもしれない。

自業自得だけど。


「元カレを好きになった自分を全否定しちゃダメですよ。男から見れば、はっきり言って、ダメな男だと思います。

でも、佐伯さんは彼の中にある気遣いの心を見つけた。そこを好きになったんですから。欠点が多く見えてしまっている人の良いところを見つけたんです。

それは自分の眼力が良すぎたと思えばいいじゃないですか。

その目を使って、次の恋に活かせばいいと思います」


テーブルの紅茶に手を伸ばし、一口飲む。紅茶は少し冷えて渋みが出ていた。


ああ、なに格好良いこと言ってるんだろう。

元カレの思い出を美化しちゃったし。

気長に待つどころか、自分から時間を伸ばしているかも。

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