モカブラウンの鍵【完結】
「お待たせしちゃいましたね」


髪をヘアークリップで留め、メガネを掛けた佐伯さんがリビングに戻ってきた。


「ううん。全然、待ってないよ。食べよ。では、いただきます」

姉ちゃんの「いただきます」の流れにのって、佐伯さんと俺が「いただきます」を言う。

味噌汁を飲んだ姉ちゃんは「ああ、しみる」とつぶやいた。

「オヤジ」

「涼太、今、なんか言った?」

「別に」と返すと、こっちを睨みながらロールキャベツを掴んだ。


ライオンが草を食べている。リアル弱肉強食だ。


「杉山、ロールキャベツ美味しい。朝から大変だったんじゃない?」

「そんなことないですよ。昨日、鍋の準備の時にロールキャベツの下ごしらえもしておいたんで。朝、やったのは煮るだけですから」

「手際、いいんだね。仕事の手際の良さも、こういうところから培われてるのかもね」と、1人納得するように佐伯さんが言う。



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