モカブラウンの鍵【完結】
駐車場を出ると、青い空が広がっていた。11月は冬と秋の狭間。秋でもあり、冬でもある。

そういう時期の空は、冬とか夏と言い切ってしまえるような季節の空より潔く透き通っている。


日曜日の午前中ということもあって、車は少ない。

駐車場がついた不動産屋って、駅前にあったよな。

うろ覚えの記憶を頼りにその不動産屋へ行った。


中に入り、いくつかの間取り図を見せてもらう。

その中で佐伯さんの条件にあった物件をいくつか見せてもらうことになった。


「こちらの部屋は東向きで、バストイレが別になっております。オートロックなのでセキュリティの面でも安心かと思います」


不動産屋からの説明を受けながら、部屋の中を見ていく。


「ここ収納スペース少ないけど大丈夫?」


「えっ、ああ、そうだね」


俺が突然、タメ口で話したせいで、佐伯さんが少し狼狽えながら答えた。

なぜか顔が少し赤い。

うわ、こんなことで困った顔をするんだ。


「でも、物は少ないから、収納のことはそんなに気にしなくても大丈夫よ」

「そっか。じゃあ、次の物件、お願いします」


そんなやりとりを繰り返しながら部屋を見て、全ての物件を見終わる頃には、お昼を過ぎていた。

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