モカブラウンの鍵【完結】
「お腹空きませんか? お昼、どこで食べましょうか?」


車に戻り、適当にお昼を食べる店を探しながら車を走らせていた。


「敬語に戻るんだ。なんで急に敬語止めたの?」

「俺たちの関係性を家族とか恋人とかに見てもらうためです」

「こっ、恋人!」


家族が抜けてるから。

恋人という言葉を言って、1人で赤くなっている。

横目で見ると、俺の目が合ってしましい、佐伯さんは俯いた。

そして膝の上にあるパンフレットをパラパラと眺め始める。


「変な意味じゃないですよ。不動産関係って、女性が1人で見に行ってトラブルに巻き込まれたってことも聞きますし。まあ、滅多にないと思いますけど。仮に男が一緒にいても、そんなに親しい関係じゃないって思われると、男がいても意味ないでしょ。だから敬語を使わなかったんです。気を悪くしたなら、すみませんでした」

「別に嫌とは思わなかったから。気を使ってくれたありがとう。物件、落ち着いて見ることができました」

「どういたしまして」

< 121 / 300 >

この作品をシェア

pagetop