モカブラウンの鍵【完結】
「そう思います。でも、ここ最近、彼女のことをつけていたんですよね?」

「彼女を怖がらせるつもりはなかったんです。振られても未練があって、話しかけようと思っても話しかけられず、それで後を追っているような状況になってしまって」

なんだか間抜けじゃないか。

この男がよく二股なんてできたな。

昨日は短時間にいろいろなことが起き過ぎていて、男の顔をほとんど見ていなかった。


上田は色白で、軽くパーマをかけているか、すこしウェーブがかかった髪。

草食系男子と言われそうなタイプ。


「あの、俺に話したいことって?」

「杉山さんは彼女と付き合っているんですか?」

「それは上田さんが知るべきことではないと思います」

「そうですね。でも、これは答えてください。彼女のことを好きですか?」


さっきまで頼りない感じの上田の目に力が入った。

本気で答えろ、という気迫が伝わってくる。


「はい。好きですよ」

「なら彼女のこと幸せにしてあげてください」

「言われなくても、そうできるように努力します」

「ありがとうございます。僕にはできなかったので」と言う上田の顔は後悔がにじみ出ている。

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