モカブラウンの鍵【完結】
「杉山」

「は、い」


突然、名前を呼ばれ、上ずった声が出た。


「緊張してるでしょ? 大丈夫よ。私たちは招かれている側だし、スピーチをすることもないから。普通にしていましょう」

「はい」と、気のない返事をした。


こんな佐伯さんの隣で、どうやって冷静にいればいいんだろう。


明日オープンする『natural jewelry』銀座店へと関係者が中に入っていく。

俺たちも一緒に着飾った人たちの後へ続いて入った。


経過状況の確認のために、何回かここに足を運んだ。

完成したばかりで、まだジュエリー用のディスプレイケースもなにもない店舗の記憶が強くて、こんなに華やかになるとは思わなかった。

想像以上。


「佐伯さん、杉山さん」

振り向くと企画の中原さんがいた。

会うときは常にスーツ姿の中原さんも、今日はシルバーグレーのワンピースを着ている。

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