モカブラウンの鍵【完結】
「ねえ、杉山」

「はい?」

「杉山は、人を助けるためなら、誰にでも彼氏のフリをするの?」

「え?」

「だから、誰にでも彼氏の振りをするの?」


桜の木の下に立つ、佐伯さんが俺を見つめながら言った。


「しないですよ」

「じゃあ、なんで? 今日も、元彼にも、不動産屋にも、私の彼氏のフリをしたの?」

「願望です」


俺を見つめる目が、丸くなる。



「佐伯さん、あのクイズの答え、言います。 3番、好意です」


「なに言っているのよ」




「俺、本気です。佐伯さんが好きです。

最初は姉ちゃんに似ていると思ったんです。年上なのに危なかったし感じがして心配だった。でも、佐伯さんのいろいろな面を見て、だんだん気になって。上田さんのことで自覚しました。

佐伯さん、前に酔っ払ったとき『幸せになれる』って、俺に聞いてきました。それも答えます。

幸せになれます。俺が幸せにします。

俺、浮気はしたことありません。する気もありません。隠し事もしません」

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