モカブラウンの鍵【完結】
――ツーツー、トゥルルル、トゥルルル


『もしもし』

「お久しぶりです。涼太です」

『涼太君。宏実、そっちにお邪魔してる?』

「はい」

『ごめん。涼太君に迷惑かけて』と、幸司さんは申し訳なさそうに言う。


幸司さんが気にすることないと思うんだけど。

あれは姉ちゃんの料理の腕と性格の問題だし。


「いえ、気にしないでください。2、3日もすれば、機嫌も直ると思うんで」

『ううん。僕が余計なことを言っちゃったから』

「ああ、姉から聞いています。正しい指摘だと思いますよ。姉の料理はよくわかりますから」


俺の一言でお互い無言になった。

多分、姉ちゃんの料理の味を思い出してしまったんだろう。


『涼太君の方で預かってもらってもいいかな。日曜日の夜には迎えに行くから』

「わかりました。日曜日、幸司さんが来るのは姉には黙っておきますね」

『そうしてもらえると助かるよ』

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