モカブラウンの鍵【完結】
幸司さんとの電話を終わらせ、リビングに行く。

姉ちゃんは変わらずソファで雑誌を読んでいる。

雑誌は2度も投げられたせいで、角がクシャクシャと好き勝手方向に折れている。

床屋や銀行に置かれている読み古された雑誌と変わらない。

読んでいる最中の雑誌なら投げるなよ。


「涼太、明日、出かけるから」

「そう。朝は食べてから出るの?」

「うん。夜はいらない」

「わかった。夕飯まだだろ。なんか作るな」

「うん」


姉ちゃんは1回もこっちを見ずに、雑誌をずっと見ていた。

今日、俺を見たのは雑誌を投げた時の1回だけだ。

無口になってるし。

いつもうるさい人が無口になられるのは、それはそれで違和感。


ま、どうでもいいけどさ。 


冷蔵庫に余っている野菜を使ってカレーを作っていると、姉ちゃんがキッチンに入って来た。

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