モカブラウンの鍵【完結】
午後の仕事は集中力が欠けて、なかなか仕事が進まなかった。

仕事が終わり、前にも佐伯さんの連れてきてもらった居酒屋『秋水(しゅうすい)』で夕飯を食べる。

佐伯さんはいつものようにビールを飲まず、烏龍茶だけを飲んでいた。

いつもと違う行動に1人、いろいろと考えてしまう。

食欲は満たされたのに、美味しいものを食べた気が全くしない。

割り勘をして、居酒屋を出ると、少し冷たい風が吹いていた。


「杉山、もう少し付き合ってもらってもいい?」

「いいですよ」


佐伯さんの横を歩く。

2人、ずっと無言だった。

どこに行くつもりなんだろう。

駅へ向かい、電車に乗る。

ホーム、改札を通り抜け、駅前を歩く。

あ、ここって一緒にアパートを見に来た場所だ。


「杉山、あのアパートが私の新居」


アパートを指差して俺に行った。


「え?」

「ゴールデンウィークに引っ越したの」


話しての展開がよく見えなかった。


「あそこの公園に行こうか。道端にいても邪魔だしね」

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