モカブラウンの鍵【完結】
ジャングルジムから離れ、佐伯さんを力一杯抱きしめた。

ほんのり青りんごの香りがする。

温かくて優しい香りだ。


「杉山、ちょっと苦しいよ」

「すみません。もうちょっとこのままで。今、すごく嬉しいんで」


少しだけ腕の力を緩める。

でも抱きしめる腕は離さない。


「ねえ。本当に私でいいの?」

「はい、佐伯さんがいいです」

「私、3つも上だよ」

「はい、僕は3つも下ですから。佐伯さんがいくつでも、佐伯さんならいいです」

「なにそれ」と言って笑った。

「それに私、結構甘えたいタイプなんだけど」

「いいですよ。好きなだけ甘えてください。今日から遠慮は禁止です。いっぱい甘やかしますから。引っ越しの荷物片付け終わりましたか?」

「うん。だいたい。杉山に返事する前に、全部、スッキリさせたかったの。だから返事が遅くなったの。待たせて、ゴメンネ」

「佐伯さんらしいです。そういう真面目なところ好きです」


佐伯さんを抱きしめたまま、話を続ける。

自分のそばにいると実感したくて。

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