モカブラウンの鍵【完結】
髪の毛が揺れる感覚がして、目が覚めた。

目を開けると、奈央美が俺の左腕に頭を乗せ、左手が俺の髪の毛を梳いている。


「おはよう、涼太」

「おはよう。よかった、ベッドの上で起きれて」

「しつこい」と言って、髪を引っ張ってきた。

「痛いよ。ごめん。俺の髪、いじるのが好きなの?」

「うん。昔、飼っていた犬と涼太の髪、似てる」

奈央美の指はずっと髪の中をゆるゆる動いている。


「犬? どんな犬?」

「黒いポメラニアン。黒くて、ちょっとくせ毛のところが似てるの。メル」

そのまま俺の頭を胸に抱きかかえた。


メルって、ポメラニアンの名前? 俺、何? 

メルの生まれ変わりじゃないけど。


「俺、犬じゃないよ」

「メル~」

奈央美は俺の反応を楽しんでいる。

体を入れ替えて、奈央美を上に覆いかぶさった。


「俺がポメラニアンのメルじゃないって、実感させましょう」


「ちょっ……、んっ」


勢いよく唇を塞ぎ、朝から奈央美と人間同士の戯れ愛(じゃれあい)を楽しんだ。

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