モカブラウンの鍵【完結】

現地視察が終わり、軽井沢から会社がある最寄駅まで、ノブに送ってもらった。

「じゃあな」と言って、俺は車から下りた。

ノブは助手席の窓を開けて、体をできる限りこっちへ寄せている。

「おう。また、飲もうな」

「ああ。ペンションのことでも、また連絡するよ」

ノブは片手を軽く上げ、窓を閉めると、その場から去っていた。



今日、集めたデータや資料を事務所に置いてから、どこかで夕飯を食べて帰ろうと考えたいた。

紙袋を片手に持って、事務所に向かっていると、最近できたフランス料理店の前に行列ができたている。

信号待ちの間、行列を眺めていた。

その行列の中に奈央美が並んでいる。

隣には誰かがいるらしい。

首を伸ばして隣りを見ると、そこには中野さんがいた。