モカブラウンの鍵【完結】
カレーを食べ終わり、皿洗いをしていると奈央美の話し声が聞こえてきた。

誰かと電話をしているみたいだ。

水道を止めて、耳を澄ます。


『先輩、どうかしましたか?』

『明日ですか?』


これじゃ、盗み聞きだな。最低だ。

そう思っても、皿洗いを続けることができない。


『ごめんなさい。予定が入っていて』

『平日でも』

『先輩、その資料はこっちで用意できますから』


仕事の話にかこつけて、奈央美を誘おうとしている。

中野のヤツ!

だんだんと頭に血が上っていく。


『はい。わかりました』


話が終わったらしい。

俺はそのままキッチンから出て、リビングにいる奈央美の前に立った。


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