モカブラウンの鍵【完結】
「お休みの日なんだから、ゆっくり休めばいいのに」

「家族で散歩したいからいいの。美和もパパが一緒の方がいいよな」

後ろで赤ちゃんが出す独特でかわいい笑い声が聞こえた。


エレベータが1階に着き、ドアを押さえる。

「お先にどうぞ」

高橋さん夫婦はお礼を言いながらエレベータを降りていった。

2人の後ろ姿をみながら「いいな」と思う。



自分が家庭をもったらどんなだろうと考えると、隣にいるのは奈央美だった。

今までの自分が漠然と結婚を考えたり、想像したりするのは、奈央美と付き合うようになってから。


俺の中では絶対的な存在になっていたんだ。


それなのに俺はくだらない嫉妬で奈央美を疑い、傷つけた。

そして未だに自分から連絡すらできない。

こんなんじゃ、他の男が奈央美を連れ去ったって文句は言えないよな。

でもこれで終わらせるわけにはいかない。

< 240 / 300 >

この作品をシェア

pagetop