モカブラウンの鍵【完結】
「あ、あれが家」

奈央美が指差す方を見る。

そこには白い外壁の戸建があった。


家の前に来て、奈央美の手を離す。

少し名残惜しい気分になる。

コートやマフラーを外し、左腕にまとめて持った。


「じゃあ、いこうか」

奈央美の問いかけに、頷いた。

俺が玄関を開け、奈央美が「ただいま」と中に向かって声をかける。


「お帰りなさい。涼太さんも、どうぞ上がってください」

出迎えてくれたのは奈央美のお母さんだった。

俺と奈央美の分のスリッパを並べてくれる。

物腰の柔らかい、丁寧な感じのある動作は奈央美と似ていると思った。

「ありがとうございます」

奈央美のお母さんの後についてリビングへ行く。


「あの、奈央美さんから羊かんがお好きだと聞いたのもので。よかったら、どうぞ」

老舗の羊かん専門店『華屋』の羊かんをお義母さんに渡した。

「まあ、ありがとうございます。私も主人もここの羊かんが好きで。どうぞ、座っててください。すぐお茶をお持ちします」

リビングには誰もいなくて、奈央美と一緒にソファに腰を下ろした。

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