モカブラウンの鍵【完結】
「きっと奈央美は涼太君の優しさに、いい意味で甘えられるのかもしれないな」


俺と付き合うことになったとき、奈央美は「甘えたい」と言っていた。

甘えたいけれど、甘えられない状況がたくさんあったんだろう。

なら、奈央美が甘えたいと思うときは絶対に側にいようと思った。


奈央美の話に意識が行き過ぎていて、お義父さんの金銀が密集し、玉が盤の端にいる。

穴熊囲いという技だ。

あれは崩せない。


負けた、と思った瞬間だった。


「王手」


今までよりも強いカチッという音がした。


「参りました」と言って、俺は頭を軽く下げる。


「いや、涼太君もなかなか強かったよ」

「いえ。穴熊囲いには勝てません」

「そうか。また相手してくれ」

「はい」

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