モカブラウンの鍵【完結】
閉められたカーテンの方に目を向けると、中から女性スタッフが出てきた。

カーテンが一気に端に纏められる。


目の前には少し照れ笑いをした奈央美が立っていた。


何て言うかよく分からないけれど、片方の肩だけで着るタイプのドレスで、肩の部分には共布で作られた花が付いている。

ウェストから広がるスカートは、デコレーションケーキのホイップクリームのようにふわふわとしている。


「どうかな?」

ぼーっとしながら、奈央美を見つめていると、沢田さんに「ほら」と肩を軽く叩かれた。

「……あ、すごく綺麗」

「それだけ?」

「何だか見ているこっちまで緊張しちゃって。うん、本当に綺麗」

「ありがとう。涼太はまだ試着してないの?」

「うん。ドレスが決まったら、そのデザインに合せた方がいいと思って」

奈央美が軽く体を揺らしながら近くの鏡を見ている。

< 288 / 300 >

この作品をシェア

pagetop