モカブラウンの鍵【完結】
「私は今着ているのが一番気に入っているんだけれど、このマーメードラインも捨てがたいの」


近くにあるマネキンが着ているドレスを見る。

1つは肩ひもが全くなく、膝くらいまで体のラインがはっきりわかり、膝下が広がっているタイプ。

もう1つはクラシカルなデザインで鎖骨や肩、腕をレースで覆うタイプだった。


「マーメードラインって、どっち?」

「そっちの裾だけが広がっているの」

あの体のラインがわかりそうな方か。あれは駄目だろう。

「あっちより、今着ている方が俺は好きだな」

「そう? 宏実さんやお母さんはマーメードラインも似合うって言ってくれたんだけど」

「いや、似合うと思うんだけど、その俺が気が気じゃない」

「え?」

「あれは肩ひもがないからさあ」

濁しながら言うと、沢田さんや女性スタッフが生温かい視線を送ってくる。

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