モカブラウンの鍵【完結】
「あの、佐伯さん。知り合いのお店なんですか?」

「うん。私が初めて設計したの。それ以来、よくここに来るのよ」

「そうなんですか」


レストランをぐるっと見回した。

言われると佐伯さんのデザインっぽい。

狭い空間に必要なものを全て入れる。

でも決してごちゃごちゃしない。

そして女性らしい温もりがある。


「そんなに見られると恥ずかしいんだけど」

「恥ずかしいって。自分が自信を持って作り上げたものでしょ?」

「そうだけど。昔の自分を見られているみたいで恥ずかしいの」

「ああ、卒業アルバム見られた感じですか?」

「そう。完璧、それ」

「じゃあ、もう見るのは、やめますよ。今度1人で来た時にでも、よく見ます」

「そうして下さい。これ、わかってると思うけど、この前の約束のことだからね」

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