モカブラウンの鍵【完結】
「どうだ」
扉の方に目を向けると、社長が様子を見に来ていた。
「その顔だと、まだデザインは決まってないんだな」
「はい。ディスプレイを高くすると、圧迫感を与えてしまったり、死角が増え、防犯上の問題が出てきて。そこをクリアするデザインが浮かばなくて」
佐伯さんは何枚かのデザイン画を見せながら、社長に説明をした。
「なるほどな。これとかはデザインは良いが、確かにジュエリーショップにしては圧迫感が強い。色を少し明るめなのに変えてみたらどうだ?」
俺は「それもしてみたんですが、何かしっくりしないんですよ」と片付けた図面を片手に、社長に向かって言った。
「そうか」
「あの、社長」
「何だ?」
「社長が友里(ゆり)さんへの婚約指輪を買った時、ジュエリーショップに入るとき、気合を入れましたか?」
社長は愛妻家で奥さんの友里さんは『ARAI DESIGN』の経理を担当している。
社員全員が目標にするような仲睦まじい夫婦。
「そりゃそうだ。気合を入れて店の前に行くんだけど、素通りしてしまったよ。結局、次の日に出直した」
佐伯さんはその話を聞きながら、クスクス笑っていた。
扉の方に目を向けると、社長が様子を見に来ていた。
「その顔だと、まだデザインは決まってないんだな」
「はい。ディスプレイを高くすると、圧迫感を与えてしまったり、死角が増え、防犯上の問題が出てきて。そこをクリアするデザインが浮かばなくて」
佐伯さんは何枚かのデザイン画を見せながら、社長に説明をした。
「なるほどな。これとかはデザインは良いが、確かにジュエリーショップにしては圧迫感が強い。色を少し明るめなのに変えてみたらどうだ?」
俺は「それもしてみたんですが、何かしっくりしないんですよ」と片付けた図面を片手に、社長に向かって言った。
「そうか」
「あの、社長」
「何だ?」
「社長が友里(ゆり)さんへの婚約指輪を買った時、ジュエリーショップに入るとき、気合を入れましたか?」
社長は愛妻家で奥さんの友里さんは『ARAI DESIGN』の経理を担当している。
社員全員が目標にするような仲睦まじい夫婦。
「そりゃそうだ。気合を入れて店の前に行くんだけど、素通りしてしまったよ。結局、次の日に出直した」
佐伯さんはその話を聞きながら、クスクス笑っていた。