モカブラウンの鍵【完結】
「なあ、杉山」
「何ですか?」
「佐伯と何かあった?」
「え、特に何も」
あったと言えばあったと言える。
でも、なかったと言えばなかったと言える。
「へえ。最近さ、杉山と佐伯の距離が近いんだよな」
「そりゃ、一緒に『natural jewelry』の仕事していますから。いつもより一緒にいる時間は長くなりますよ」
「バーカ。そう言う意味じゃないよ。2人が並んで歩くときの距離。前はパーが2つ分くらいの空間があった。今はパー1つ分だ」
「何ですか、それ? 1つも2つも大差ないでしょ」
「わかってないな。パー1つ分を縮めるのは大変なんだよ、男と女は。女将さんもそう思いません?」
松下さんが枝豆の殻を小鉢に捨てながら聞いた。
「そうね。男と女の距離って難しいわよね。ちょっとしたことで距離がゼロになったり、何百メートルも空いたりするから。でも、少しでも近づいたなら、その男と女には何かしらの出来事があったはずよ」
女将さんは俺の目の前に厚揚げを置く。
さっき頼んだのが、もう来た。
美味そう。
厚揚げの上に乗ったネギと生姜に軽く醤油をかける。
厚揚げの熱で醤油の香ばしい香りが広がった。
「何ですか?」
「佐伯と何かあった?」
「え、特に何も」
あったと言えばあったと言える。
でも、なかったと言えばなかったと言える。
「へえ。最近さ、杉山と佐伯の距離が近いんだよな」
「そりゃ、一緒に『natural jewelry』の仕事していますから。いつもより一緒にいる時間は長くなりますよ」
「バーカ。そう言う意味じゃないよ。2人が並んで歩くときの距離。前はパーが2つ分くらいの空間があった。今はパー1つ分だ」
「何ですか、それ? 1つも2つも大差ないでしょ」
「わかってないな。パー1つ分を縮めるのは大変なんだよ、男と女は。女将さんもそう思いません?」
松下さんが枝豆の殻を小鉢に捨てながら聞いた。
「そうね。男と女の距離って難しいわよね。ちょっとしたことで距離がゼロになったり、何百メートルも空いたりするから。でも、少しでも近づいたなら、その男と女には何かしらの出来事があったはずよ」
女将さんは俺の目の前に厚揚げを置く。
さっき頼んだのが、もう来た。
美味そう。
厚揚げの上に乗ったネギと生姜に軽く醤油をかける。
厚揚げの熱で醤油の香ばしい香りが広がった。