モカブラウンの鍵【完結】
「別に、何もないですってば。ただ、慰労会の帰りに自宅まで送っただけですよ」

「本当に送っただけか?」

「それ、社長にも同じような顔で、同じことを言われました」

「どんな顔だよ」

「エロい展開を望んでる顔です」


女将さんのいる前でこんな言葉を使うのは不本意だったけれど、それ以外の適切な言葉が浮かばなかった。

女将さんの方を見ると口元が微かに歪んでいる。


「悪かったな。エロい顔で。で、どうなんだよ」

「何もしてません。送り届けたあと、すぐ帰りましたから」

「つまんない展開だ」

「つまんなくて結構です。僕は当たり前のことをしただけですから」

< 50 / 300 >

この作品をシェア

pagetop