モカブラウンの鍵【完結】
「では、デザイン説明をさせていただきます」

中原さんの前にプレゼン資料を並べた。


「今回のコンセプトが"男性が気軽に入れる"という事で、デザインを考えさせていただきました。

ジュエリーショップに男性が入るというのは、プロポーズと同じくらい気合と勇気がいるものです。

ショップの外観を男性向けにしても、ジュエリーショップはジュエリーショップです。男性が気軽に入るというのは不可能です」


資料を見ながら、中原さんが軽く相槌をうつ。


「ですから、ジュエリーショップに入る前に気合を入れる状況を数秒作ることにしました。次の資料を見てください」


資料をめくった中原さんが不思議そうな顔でこっちを見た。


外観を描いたデザイン画。

そこにはダークブラウンのドア。

中が見えるようにするためのガラスもない、ただのドアだ。

その代わり、ドア以外はウィンドーディスプレイを多くし、ショップの中が見えるようにしてある。

< 56 / 300 >

この作品をシェア

pagetop